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家型という形~後編~

  • 2020.01.15
  • 建築

前回はなぜかAiの話になって「アルジャーノンに花束を」で落ち着いてしまった。話が飛ぶのは良くあることなので、まあ、この辺はご愛嬌というかごにょごにょとお茶を濁させてください。

要は造形の思考にはプロセスというものがかならずあるから、そこを端折ってはいけないよ、ということなのである。余談だけどパウル・クレーの「造形思考」には造形の本質が書かれている。通読するのにかなり骨が折れるけど、興味のある方はぜひご一読を。

 

 

カタチには記憶がある、と書くとあまりに唐突すぎて何のことかわからない。記憶や感情を想起させる力がカタチにある、の方がわかりやすいだろうか。〇〇のカタチには〇〇の記憶が宿っている、なんて言い方もできる。

僕がここでいいたいのは建築家らしく「家のカタチ」についてである。それももっと限定して「家型」にしてしまおう。「家型」とはホームベースを逆さまにしたかたちのこと。無印の家からアトリエ系の建築家までこぞってこの家型を採用しているからきっと何かあるはずだと推理してみたくなる。

 

考えてみるとこの「家型」、まことに理にかなっている。住宅規模の木造建築なら屋根の形は三角形がいい。陸屋根(平らな屋根)はコンクリートや鉄骨向きだ。雪の多いヨーロッパや雨の多いアジアで発達したのだろう、中の居住空間を空から降ってくる雨や雪から守ってくれる。

歴史があるから懐かしさがある。遠い昔、伊勢神宮の寝殿造りやアルプスのヒュッテから始まって現代のわれわれが考える「家」の雛形となった。建築家の永田昌民さんの描く屋根は等辺三角形でなく「へ」の字になっていて小気味が良い。趙海光さんはもっと発達させて斜辺だけの「片流れ」にした。これも変遷のひとつだと思う。建築家は屋根で表情や佇まいを表現するものなのだ。余談だけど不肖ながら僕だって屋根の形には結構気を使っている。勾配は何寸にしたらいいか、すこし桁を持ち上げてみてはどうか、または左右の勾配を変えてはどうかと微妙な試行錯誤を何度となく繰り返している。

 

 

フランツ・リストの「巡礼の旅」の1曲、ル・マル・デュ・ペイはノスタルジアとも呼ばれ「望郷の念を起こさせる田園風景」とか「理由のない悲しみ」とか訳されている。風景が感情を想起させるならば(懐かしいとか物悲しいとか)、ここにカタチやデザインの原型があるのではないだろうかと推測する。そうか、さすがにここまでくるとアンリ・ベルクソンやミシェル・フーコーの出番かもしれない。精神と物質。自然と私たちの心をつなぐもの。

逆に言えば、感情を想起できないカタチやデザインはどうだろう。感情があったとしても単純な感情(うれしい、楽しい、悲しい、暗い)ならば滋味のあるデザインとは言えない気がする。私たちが求めているのは言葉で言い表すことのできない感情、訳出することが難しい感情を想起するデザイン(=形態)なのだ。非言語に行けば行くほど豊かな感情だと思う。

あまりに凄すぎてポカンとしてしまう映画とか、なぜかわからないけど涙が止まらない景色とか、そういった経験はないだろうか。人はほんとうに素晴らしいものに出会ったときに言葉を失う。だから言葉で説明できるうちは、まだまだなのだ。

 

 

 

佐藤 隆幸

 

 

 

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