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住宅の神話的構造~その2~

  • 2020.08.31
  • 建築

前回は茶室の話を書こうと思いながら、住宅の神話的構造などというものを書いてしまった。このふたつは実はとても密接な関係で、分かちがたく結ばれているのでもう少しお付き合い願いたいです。

 

住宅は(あるいは建築は)中がくりぬかれた空間なので中空である。

空のことをウツという。ウツホやウツロという古語で虚とも書く。

このウツから派生してウツロイというものができた。このウツロイがあるかないかで、いい建築かどうか、いい住宅であるかどうかが問われると思う。

何故ならウツロイとは「をかし」であり「あはれ」だからだ。

 

かなり論理をすっ飛ばしてしまったので、すこし解説を。

「をかし」は言わずと知れた枕草子で、自然の移ろいゆくさまを「いとをかし」と表現して見せた。

「あはれ」はもちろん源氏物語である。紫式部と清少納言はともに同時代で宮中文学の大成者だ。

枕草子は「こうこう、こういうものが好き」というエッセイなのだが、この「好み」の美学が後の茶室や庵に昇華していく。すなわち「好き」は数寄(すき)であり、「利休好み」や「見立て」になっていく。ここで日本人は引き算をしていったのだ。「好み」を美意識に昇華していく過程はまさに引き算であり、うつろいゆくものを追い求める過程そのものという気がする。

だから我々は、庭に自然の木を植え、落ち葉や紅葉を愛でるのだ。

 

 

源氏物語はもっと深淵。

ウツツ(現世)からウツ(空=夢幻)へ移行する様はまるで能。そこにはいないものの気配を映し出す、まさにうつろいの文学だった。桐壺の喪失というか不在が、この長い物語の基層になっている。

で、最近読み終えた本、レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」。村上春樹氏の訳で読み応えあり。というか、ほんとうにおもしろかった。

この小説のおもしろさは、終始そこにいないはずのテリー・レノックスの不在にある。主人公のフィリップ・マーロウと行きがかり上の友人であるが、殺人事件の容疑で自死してしまう。それから徹頭徹尾、テリー・レノックスの不在が進行していく物語なのだ。

村上春樹氏の解説によれば、フィッツジェラルドのグレート・ギャツビーのジェイ・ギャツビーに比定しているという。僕はレイモンド・チャンドラーがグレート・ギャツビーの「見立て」をおこなったのだと見ている。

世界文学の元型がここに見えた気がした。おっと、余談余談。

 

 

家型、方丈、ハレとケ、を論じてきて今回は空(ウツ)からウツロイへと考えてみた。

とまあ、こういうわけで、建築や物語の元型を探す旅は、おもしろくて終わらない旅である。

 

佐藤隆幸

 

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