正月の過ごし方
- 2020.12.08
- 建築
来年はいつにも増して出歩けない正月になりそうである。
いわずと知れたコロナ禍なので、いつもどおりの寝正月だ。
だったら寺山修司ばりに「テレビを捨てよ、書を読もう」と思い立ち、せっかくの機会だから年末年始に読みたい本を考えてみた。
とはいっても、いわゆるハウツー本やビジネス書はリアルすぎてせっかくの休みが台無しになりそうだから、できるだけ現実から離れて空想の中で遊べる本がいいなあと思う。
・百年の孤独 ガルシア・マルケス
いきなりこれは重たいかな。でもこれだけ空想力が縦横無尽に暴れまわる小説はない。うっかりしていると読者は置いてけぼりをされてしまう。難解だ難解だといわれているが、僕はそうは思わなかった。池澤夏樹さんはまず登場人物を列記して、相関図を書いた方がよいと言っているが、あまり難しく考えずに、迷宮の世界で戯れるくらいの気持ちで臨んだ方がいい。
・口訳万葉集 折口信夫
正月だから百人一首と思ったけど、せっかくだから万葉集。民俗学者で歌人の折口信夫の解説で詠むと、太古の人々の感情が現代のわれわれと地続きなんだとリアルに感じる。防人の詩は必読。
・灯台へ ヴァージニア・ウルフ
この視点の動き様はなんなんだ。目の前のことを語っていたと思ったら、いつの間にか追憶の話になっている。近くと遠くと今と過去が、それこそシームレスに語られていくものだから、読みはじめは気付かずに戸惑ってしまった。よし、これはそういう小説なんだと思うことにする。今年こそは読んでやるぞ、ヴァージニア・ウルフなんてこわくない。
・忘れられた巨人 カズオ・イシグロ
古典ばかり並んだので現代の作家も読まなきゃ。買ったまま、本棚で背表紙がじっと僕を見ている。
カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」がすごく面白かったので勢いで買ったのだけどなぜか遠のいてしまった。そういうことってありますよね。
・密やかな結晶 小川洋子
今年最大のニュースだった。小川洋子さんがブッカー賞の最終候補に残ったのだ。「博士の愛した数式」も面白かったけど、僕はやっぱり「密やかな結晶」の世界が好きである。
読書はとても個人的な楽しみなんだけど、じつはとても簡単にリアルワールドから離れることができる体験なのだ。日常から非日常へ、本を片手にソファとコーヒーさえあれば、ハレの場に行くことができる。僕がこのブログで幾度となく語ってきた、住宅を語るうえで欠かせないこと。何物にも邪魔されず住むことが「ケ」でなく「ハレ」となること。いい住宅とは、たったこれだけでいいのだと、ようやくこの歳になって思うようになった。
みなさんも、どうかお元気で。
佐藤 隆幸
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